三重県のフクロウ生態と自然と調和する巣箱づくり
- 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
- 3月9日
- 読了時間: 8分
近年、都市化や環境変化により、野生動物の生息環境が悪化しています。フクロウもその例外ではなく、生息数が減少している地域があります。フクロウは夜行性の猛禽類で、鋭い聴覚と視覚、静かな飛行能力を駆使して狩りを行います。世界には約200種が存在し、日本には11種が生息しています。三重県では、そのうち6種が確認されており、フクロウ(Strix uralensis hondoensis)は三重県版レッドデータブック2015では、準絶滅危惧 (NT)に指定され、保護活動が進められています。

お客様から「庭にフクロウ用の巣箱を設置したい」とのご相談を受け制作中です。本記事では三重県におけるフクロウの生態、巣箱の設計と設置方法などをご紹介します。

お庭にフクロウの巣箱を設置して、フクロウの保護に貢献し、自然環境の保全に繋がれば幸いです。
フクロウの生態と三重県の状況
フクロウの一般的な特徴
フクロウは夜行性の鳥で、小型哺乳類(ネズミなど)、鳥類、昆虫を捕食し、生態系のバランスを保つ重要な役割を果たします。鋭い聴覚と視覚を持ち、羽毛の構造により静かに飛行できます。巣は木の洞や他の鳥の古巣を利用する種が多く、森林や里山に適応しています。
フクロウ (Strix uralensis)

特徴: 全長50~65cmの大型種で、灰褐色の体と丸い顔盤が特徴。
生息状況: 本州中部の森林に分布し、三重県では鈴鹿山麓などで観察される。準絶滅危惧種に指定。
食性: 小型哺乳類、鳥類、昆虫など。
巣: 木の洞や古巣を利用。
他には
アオバズク (Ninox japonica)
特徴: 全長31~33cm、丸い黄色い目が特徴。
生息状況: 夏鳥として里山や森林に飛来。
コノハズク (Otus sunia)
特徴: 全長17~21cm、日本最小のフクロウ。
生息状況: 本州南部で一年中見られる。
オオコノハズク (Otus semitorques)
特徴: 全長21~26cm、コノハズクよりやや大型。
生息状況: 日本全域に分布。
トラフズク (Asio otus)
特徴: 長い羽角が特徴の中型種。
生息状況: 越冬個体として確認可能。
コミミズク (Asio flammeus)
特徴: 全長34~42cm、地面に巣を作る。
生息状況: 冬鳥として渡来。
注: コミミズク以外は巣箱を利用可能です。
フクロウ用巣箱の製作過程


まずは、コンパネを各サイズに丸ノコでカットしていきます。

巣箱の高さは、奥側を74cm、入り口側を70cmにして屋根に少し傾斜をつけています。
カット面はサンダーをかけて切り口を滑らかに仕上げます。
入り口は、直径19cmにしました。

コンパスで下書きしてジグソーでカットしていきます。
この時、同時に外装の木材も入り口直径に合わせてカットしておくと組み立てがスムーズです。
カット面は、手でヤスリがけをしておきます。
組み立ては、インパクトを使用し、5cmのタッピングビスで止めていきます。
最初は釘で組み立てはじめましたが、12mmのコンパネは割と重くて釘だと巣箱を持った時に抜けてしまう感覚があったのでタッピングビスに変更しました。
12mmのコンパネ同士でビスが通るところが限られているので、ビスが中や外にはみ出ず真っ直ぐ入っていくよう細心の注意を払って作業を進めました。

コンパネで巣箱の下地を製作後、強度を出すため木材で外装します。
今回は試作品の廃材があったので、そちらを使用しました。
原寸合わせでカットしながら、外装は釘で打ち付けていきます。

外装後に塗装をしました。
塗料の匂いや、フクロウの健康に配慮して自然素材の塗料を使用しました。
柿しぶコートG ウォルナットと柿しぶコートGうすめ液を混ぜて塗っていきます。

塗装が乾いてから装飾に入ります。
蝶番とフックを使用して、正面向かって右側面の開閉扉を取り付けました。
屋根には杉皮を釘で打ち付けました。
巣箱2は、底面に開閉口をつけ、メンテナンスのしやすさを検証できたらと思います。
最後に、扉の取手と入り口下部に杉丸太を半割りしたものを取り付けて完成です。
入り口下部の丸太は、フクロウが巣箱に来てくれたか分かるよう取り付けました。

完成後、嗅覚が鋭い鳥類の巣箱に人間が使用していた廃材を使ったら警戒して営巣しないのでは?と教えていただき、とても反省。柿しぶコートGで相殺されていることを願います。
フクロウの営巣条件とは?フクロウが利用しやすい巣箱の設計と設置ポイント

樹木に取り付け仮実験
フクロウの巣箱を制作してみてかなりの重さがあることが分かり色々調べましたが、釘を打つ方法や樹木を板なので挟み込んでする方法、ツリーハウス用の金具を使う方法などもありましたが、なるべく樹木に負担にならないように今回は設置予定の欅(上の写真はテストで設置した杉)と同種の樹木で棒を作りそれを支えにしていこうと考えています。
木釘(同種の欅から作った棒)を使用する方法は、欅の木の健康に対する影響を最小限に抑える可能性があり、金属製の釘やボルトよりも長期的なダメージが少ないと考えられます。
ただし、初期の傷は避けられませんが、適切なサイズと設置方法でリスクを管理できます。海外のサイトなどをみると、木製固定具は分解性が高く、自然に近い選択肢であることが書かれていましたが、大型構造物の固定には強度なども必要になってくるのでがいろいろと実験予定です。
フクロウの営巣環境とは?
古い針葉樹林や広葉樹との混合林を好み、樹洞や他の大型鳥類の古巣を利用して繁殖します。
彼らの生息環境には以下のような特徴があります。
針葉樹林や広葉樹の混合林が重要だと言われてます。
自然の樹洞を利用:樹齢を重ねた大木が営巣に適している
餌資源が豊富なエリアを選ぶ:ネズミやモグラなどの小型哺乳類が多い地域
人の影響が少ない環境:過度な間伐伐採が行われていない森林地帯
このような条件が整った場所であれば、人工巣箱を活用することで営巣を促すことが可能です。
一般的に、フクロウの巣箱には以下のような寸法が推奨されています。
床面積:30cm × 30cm 以上
高さ:60cm 程度
入り口の大きさ:直径12~15cm
入り口の高さ:床面から約50cm
巣箱の向き
一般的には 東~南向き が推奨される(風や雨の影響を受けにくいため)ただし、周辺環境に応じて最適な向きを選ぶことが大切。
巣箱を設置する高さは樹木の 5~10mの高さ に設置する
地面に近すぎると捕食者(カラスやテンなど)に狙われやすいため注意
また巣箱を設置するだけではなく、定期的なメンテナンス を行うことが、フクロウの繁殖成功率を高めるために重要です。

フクロウは体長50~65cm、翼を広げると約120~140cmになるため、十分な内部空間を確保しなければなりません。また、巣箱の底には少量の木くずやチップ、乾いた苔を入れることで、より自然に近い環境を作ることができます。
フクロウを庭に誘致・営巣させる重要性

フクロウを庭に誘致し、営巣させることは、単なる鳥の観察の楽しみを超えた深い意義を持つ活動です。
まず、フクロウはネズミなどの小型哺乳類を捕食することで、害獣を自然に駆除し、農作物や庭の植物を守る役割を果たします。これにより、化学的な駆除剤の使用を減らし、自然環境への負荷を軽減できます。
また、フクロウの存在は生態系の健全性を示す指標となり、生物多様性の保全に貢献します。たとえば、三重県に生息するウラルフクロウは準絶滅危惧種であり、その保護は地域の生態系バランスを維持する上で特に重要です。
さらに、フクロウの巣箱設置は、都市化や森林伐採、農薬使用、交通事故などで失われつつある生息地を補完し、フクロウの繁殖を支援する有効な手段です。安全で安定した営巣場所を提供することで、個体数の回復を助け、絶滅のリスクを軽減します。
この活動は、地域社会の環境教育にもつながり、自然保護への意識を高めるきっかけとなります。庭にフクロウを迎え入れることは、自然と共生する第一歩となり、次世代に豊かな自然を引き継ぐための具体的な行動と言えます。
自然と共生する第一歩として、ぜひ巣箱設置に挑戦してみてください。
剪定屋空では、お庭の管理や樹木の剪定を通じて、生物多様性の保全に貢献することを目指しています。フクロウの営巣環境を守るため、巣箱の設計・設置・メンテナンスまで対応し、鳥たちが安心して暮らせる環境づくりなどもサポートしています。
また、剪定作業で発生する伐採木や自然素材を活用し、木鳥商店 ではフクロウの巣箱をはじめとした「自然素材のプロダクト」を販売予定です。木材の無駄を減らしながら、生態系に配慮した製品をお届けできるよう取り組んでいます。
こんな方におすすめ
フクロウを庭に誘致したい方
自然環境を活かした庭づくりをしたい方
自然素材の巣箱に興味がある方
巣箱の設置についてご興味がある方は、ぜひ剪定屋空または木鳥商店までお問い合わせください。
🔗 木鳥商店オンラインショップhttps://kotorino.theshop.jp
🔗 剪定屋空 公式サイトhttps://www.senteiyasora.com
剪定屋空では、フクロウをはじめとする鳥類の巣箱の設置や取り付けモニタリングなども行っております。
🔗 人口巣洞・巣箱モニタリングシートhttps://miro.com/app/board/uXjVKllF0i4=/
さらに、オンラインショップ『木鳥商店』では、今後大型の巣箱も販売予定です。興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。