top of page

リジェネラティブガーデン:庭園年間管理の手引き

執筆者の写真: 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空

自然の力を活かし、土壌、生態系、そして地域社会を豊かにする、それがリジェネラティブガーデンです。 この年間管理の手引きでは、再生型の視点を取り入れた庭園管理の流れを月ごとに解説し、より持続可能で、生命力あふれる庭造りのためのヒントになれば幸いです。


リジェネラティブガーデンとは?


リジェネラティブガーデンとは


リジェネラティブ(再生型)とは、その言葉の通り、自然の再生を促すことを意味します。 再生型ガーデンは、単に植物を育てるだけでなく、土壌を改善し、生態系を回復させ、自然の循環を促すことを目指します。自然と人が共生する暮らし を実現する、パーマカルチャーの考え方にも通じるものです。 パーマカルチャーは、永続的な農業システムの下で、人と自然が共に豊かになるよう、生活や地域社会をデザインしていくことを意味します。 その倫理は、地球への配慮、人への配慮、そして公平な分かち合いに基づいています。 これらの倫理は、再生型ガーデンの実践にも深く関わっており、自然と調和した庭づくり、地域社会への貢献、そして資源の循環を重視する姿勢を育みます。  


近年、企業の間でも再生型農業を促進する取り組みが進んでいます。 これは、再生型という考え方が、農業分野だけでなく、より広範な社会において持続可能性を実現するための重要な鍵として認識され始めていることを示しています。  


土壌の健康と肥沃度


再生型ガーデンでは、土壌の健康がすべての基盤となります。土壌は、植物の生育を支えるだけでなく、多様な生物の生息地であり、水や栄養分の循環を担う重要な役割を担っています。


土壌の健康を維持し、肥沃度を高めるためには、化学肥料の使用を控え、有機物を積極的に活用することが重要です。 化学肥料は、土壌中の微生物のバランスを崩し、土壌の劣化を招く可能性があります。一方、堆肥や落ち葉などの有機物は、土壌生物の餌となり、土壌構造を改善することで、植物の健全な生育を促進します。 


年間管理の流れ

Month

Key Tasks

1月

土壌改良、冬剪定、害虫抑制

2月

寒肥、根回りケア

3月

雑草対策、種まき、苗の育成

4月

施肥、花壇・芝生・下草の管理

5月

マルチング、病害虫対策

6月

雨水活用、排水・通気確保

7月

水やり、日陰・風通し確保

8月

収穫、植栽の補強

9月

秋植え、枯葉・残渣の利用

10月

落ち葉堆肥、秋花・果実の収穫

11月

土壌養生、霜対策、落葉清掃

12月

点検・記録、環境整備、次年度計画


1月:寒さを活かした土づくりと準備期間

冬の寒さは、土壌改良と害虫抑制に役立ちます。


  • 土壌改良と有機物の供給

    • 落ち葉や剪定枝を堆肥化し、土壌に有機物を供給します。気温が低い時期でも、落ち葉を細かくしたり、米ぬかなどを混ぜることで微生物の活動を促進し、発酵を促します。

    • 竹や剪定枝をチップ化し、マルチングや堆肥の材料として活用しましょう。

    • 世界の再生型農法では、冬場に緑肥を栽培し、土壌に有機物と窒素を供給する手法が取り入れられています。 健康な土壌は、より多くの炭素を吸収するため、再生型ガーデンは気候変動の抑制にも貢献します。 地域の気候条件に合わせて、カバークロップを植えて土壌を保護し、雑草の抑制と土壌の健康維持を図りましょう。  


  • 冬剪定の実施(必要最小限)

    • 落葉樹の剪定は、樹形を整えやすい時期ですが、再生型の観点から、木の自然な形を尊重し、必要最低限の剪定にとどめましょう。

    • 剪定した枝は、堆肥、薪、炭などに再利用し、資源を循環させます。


  • 土壌凍結や寒気を利用した害虫抑制

    • 土壌を深く掘り返さずに表面を軽く耕し、寒さや鳥などの捕食者を利用して越冬害虫を減らします。ただし、耕しすぎは土壌構造を破壊し、微生物の活動を阻害するため避けましょう。

    • 土壌中の有益な微生物を保護するため、不耕起栽培や被覆作物を活用する方法も検討しましょう。


2月:寒肥と根回りのケア

植物が休眠している間に、土壌を豊かにし、春の芽出しに備えましょう。


  • 寒肥の施用

    • 果樹や常緑樹には、ゆっくりと分解される有機質肥料(堆肥、油かすなど)を少量施します。

    • 化学肥料は土壌生態系への悪影響があるため、[要出典] 使用を控え、堆肥や落ち葉マルチで土壌生物を育てることを優先します。

  • 庭木や低木の根回りケア

    • 根回りに落ち葉マルチを敷き、根を寒さから守ります。

    • 根回りに堆肥やコンポストを施用することで、土壌中の微生物の活動を促進し、根の生育を促します。

3月:春の立ち上がりと下草管理

春は、植物が芽吹き、新たな生命が誕生する季節。多様性と共生を意識した庭づくりを始めましょう。


  • 雑草対策は「共生・抑草」の視点で

    • すべての雑草を排除するのではなく、害の少ない雑草は一部残し、生物多様性を保ちます。ミツバチや小動物の生息環境を守ることも大切です。

  • 種まき・苗の育成

    • 在来種や地域に適した花、ハーブ、低木の苗を育て、多様性のある庭を創造します。

    • 混植や間作を取り入れ、植物同士の相乗効果を高めます。「多様性による相乗効果」とは、異なる種類の植物を一緒に植えることで、病害虫の発生を抑えたり、生育を促進したりする効果のことです。例えば、マリーゴールドをトマトの近くに植えると、マリーゴールドの根から出る成分がセンチュウを抑制し、トマトの生育を助けます。また、ネギ類とニンジンを混植すると、互いに害虫を忌避し合い、健やかに育ちます。このように、相性の良い植物を組み合わせることで、農薬や化学肥料に頼らずに、健康な植物を育てることができます。

    • 例:相性の良い草花同士を寄せ植えすることで、病害虫を抑えながら景観に変化をもたらします。


4月:新芽の管理と生物多様性の促進

植物の成長が活発になる時期。土壌の健康と生物多様性を育みましょう。

  • 施肥と土壌微生物の活性化

    • 冬に作った堆肥を株元にすき込み、土壌の有機物を増やし、通気性と保水性を高めます。

    • 土壌中の微生物の多様性を高めるために、様々な種類の有機物をバランス良く施用します。

  • 花壇・芝生・下草の管理

    • 芝生の更新や多年草の株分けなどを行い、夏場の管理負担を軽減します。

    • 下草として在来種やハーブ類を導入し、雑草抑制と景観の向上を両立させます。

    • 芝生は、在来種や低管理型の品種を選び、水やりや肥料の量を減らす工夫をしましょう。


5月:活発な生長期の持続的管理

植物が旺盛に成長する時期。水やりと病害虫対策を適切に行い、健やかな成長をサポートします。

  • マルチングで土壌水分を保つ

    • 土壌水分を保持し、雑草を抑えるために、有機系マルチ(木材チップ、バーク、わら、落ち葉など)を使用します。

  • 病害虫への観察と共生的対策

    • アブラムシなどの害虫が発生した場合は、テントウムシなどの天敵昆虫を活用するなど、生態系のバランスを重視した対策を検討します。

    • 化学農薬の使用は避け、病害虫の発生原因を突き止め、予防的な対策を講じます。 例えば、土壌の栄養バランスが崩れていると、植物が弱り、病害虫に侵されやすくなります。土壌診断を行い、必要な栄養素を補給することで、植物の抵抗力を高めることができます。また、植物の生育状況をよく観察し、早期に病害虫を発見することで、被害を最小限に抑えることができます。  


6月:梅雨の雨水循環と排水・通気の確保

梅雨の時期は、雨水を有効活用し、過湿による被害を防ぎましょう。

  • 雨水を活かす設計・管理

    • 雨庭(レインガーデン)や小規模ビオトープを設置し、雨水を地下に浸透させます。

    • 雨水タンクを設置し、雨水を貯留して庭の灌水に利用します。

  • 過剰な湿気で病気が広がらないよう、植栽の風通しや排水をチェックします。


7月:夏越し対策と環境負荷の低減

夏の暑さから植物を守り、水資源を節約するための工夫が重要です。

  • 水やりの最適化

    • 早朝や夕方の涼しい時間に水やりを行い、土壌の乾燥を防ぎます。

    • 散水には雨水タンクを活用し、水資源を節約します。

    • マルチングを厚めにすることで、土壌の蒸発を軽減します。

  • 日陰と風通しの確保

    • 遮光ネットや生垣、パーゴラなどを活用し、植物に適度な日陰を作ります。

    • つる植物を利用したグリーンカーテンも効果的です。


8月:夏期の収穫と生態系のバランス維持

夏の収穫を楽しみながら、植物の健康管理と生態系への配慮を続けましょう。

  • 果実やハーブの収穫

    • 収穫後の残渣は堆肥化し、有機循環を促します。

    • 収穫物を地域の人々と共有することで、地域社会とのつながりを深めます。

  • 暑さや乾燥に強い植栽の補強

    • 暑さで弱った植物や土壌に有機物を追加し、植物の健康を維持します。


9月:秋への移行と次期の苗づくり

秋の訪れを感じながら、次の季節への準備を始めましょう。

  • 秋植え苗の準備・植え付け

    • 秋に定植する野菜や花の苗を準備し、植え付けを行います。

  • 枯葉・残渣の利用

    • 枯葉や残渣を堆肥化し、土壌改良に役立てます。


10月:秋の成長と落ち葉堆肥の活用

秋の恵みを享受し、冬に向けた準備を進めます。

  • 落ち葉の堆肥化

    • 落ち葉を集めて堆肥化し、翌年以降の土壌改良に備えます。

  • 秋花・果実の収穫・管理

    • 秋咲きの花や果実を収穫し、一部は生態系のために残しておきます。


11月:秋の深まりと冬支

植物を冬の寒さから守り、来春に備えましょう。

  • 土壌の養生と霜対策

    • 耐寒性の弱い植物にマルチングを施したり、防寒対策を行います。

  • 落葉清掃と分解促進

    • 落ち葉を一部残して土壌を保護し、残りは堆肥化します。


12月:最終点検と来年に向けた計画作り

一年を振り返り、来年の庭づくりを計画する時期です。

  • 一年の点検と記録

    • 土壌状態や植物の生育状況を記録し、来年の計画に活かします。

  • 冬休眠期を活かした環境整備

    • 生態系に配慮し、冬眠する生き物のすみかを残しておきます。例えば、落ち葉や枯れ枝を積み重ねて、小動物や昆虫の越冬場所を作ることができます。また、鳥の巣箱を設置したり、バードフィーダーを設置して、鳥たちが冬を越せるようにサポートすることもできます。

  • 次年度の計画(在来種導入や生物多様性の強化等)

    • 再生型の視点で、来年の具体的な目標を立てます。例えば、在来種の植物を新たに導入したり、生物多様性を高めるために、多様な植物を植える計画を立てることができます。また、地域の子どもたちやボランティアを招いて、ワークショップやイベントを開催し、再生型ガーデンについて学ぶ機会を提供することもできます。


まとめ


リジェネラティブガーデン


再生型ガーデンは、自然の循環を尊重し、土壌、生態系、そして地域社会を豊かにする庭です。この年間管理の手引きを参考に、化学資材に頼らず、土壌生物や在来種、地域資源を最大限に活用することで、より持続可能で多様性豊かな庭を創造しましょう。


小さな庭から、大きな変化を生み出す。再生型ガーデンは、私たちと自然、そして地域社会をつなぐ、希望に満ちた庭なのです。さあ、あなたも再生型ガーデンを始めませんか?

bottom of page