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執筆者の写真三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空

サクラ保全管理講座-クビアカツヤカミキリ防除対策-

日本花の会が主催し、日本樹木医会が後援の「サクラ保全管理講座」が2024年11月13日に開催されオンライン受講をさせていただきました。本講座は、樹木医や造園業界におけるCPD認定プログラムの一環として、調査や保全方法に関する最新の知見が共有されました。


サクラ保全管理講座-クビアカツヤカミキリ防除対策-



  1. クビアカツヤカミキリ防除対策

    栃木県足利市の松島一司氏から、クビアカツヤカミキリによる桜の被害防止や駆除手法の詳細な報告が行われました。


  2. 水戸桜川と水戸藩の桜

    「水戸桜川日本花の会」代表の稲葉寿郎氏が、水戸藩の時代から続く桜川の歴史や文化的意義について解説が行われました。


  3. 京都府立植物園の桜コレクション

    開園百年を記念して、ナショナルコレクションに認定された桜に関する報告が中井貞氏から行われました。



クビアカツヤカミキリの被害状況と防除対策


クビアカツヤカミキリは、主に桜や梅などの樹木に被害を与える特定外来生物として知られています。



三重県におけるクビアカツヤカミキリの被害状況について、以下の具体的な事例や県や市などのサイトで報告されています。


1. 木曽岬町の被害状況

木曽岬町では、鍋田川堤防の桜並木において、クビアカツヤカミキリの生息が確認されています。



2. 桑名市の被害状況


桑名市でも、クビアカツヤカミキリによる被害が報告されています。


市内各地の被害状況を把握するため、発見した場所などの情報を以下の「クビアカツヤカミキリアンケート」にアクセスして、位置情報等の登録をお願いします。



3. 三重県全域の状況


三重県全域において、クビアカツヤカミキリによるサクラの木への食害が確認されています。



クビアカツヤカミキリは、幼虫がサクラ、ウメ、モモなどの樹木の中に入り込み、木の内部を食い荒らしてしまう外来昆虫です。


対策と注意喚起

被害の拡大を防ぐため、以下の対策が推奨されています。


  • 早期発見と駆除: クビアカツヤカミキリを見つけた場合、その場で駆除することが推奨されています。 


  • 情報提供: 被害や成虫を発見した際には、速やかに自治体や関係機関へ報告することが求められています。




防除方法


  • 薬剤施工


    • 成虫駆除にはスミパインやダブルトリガー、アグロスリンが使用され、散布が実施されています。

    • 幼虫駆除では、樹幹注入剤アクセルフロアブルを用い、木の内部に潜む幼虫を直接駆除します。

  • 物理的防除

    • 幼虫の掘り取りや掻き出しが手動で行われ、ピアノ線をフック状に加工して作業効率を高めています。

    • 成虫の脱出防止には木の枝や粘着ネットを用いた閉塞資材が活用されています。

  • 生物農薬の活用

    • 化学農薬が使用できない地域では、バイオセーフ(スタイナーネマカーポカプサエオール株)という生物農薬が幼虫駆除に使用されています。


薬剤を用いたクビアカツヤカミキリ防除


クビアカツヤカミキリの被害を防ぐためには、多様な薬剤が用いられています。以下に、主に使用される薬剤とその特徴をまとめました。


成虫駆除用薬剤


  1. スミパイン


    • 成分: MEP (メトキシエチルピリミジニルチオエーテル)

    • 作用機構: 成長防止剤 (IGR: Insect Growth Regulator) として作用し、成虫の発生を抑制します。

    • 特徴:

      • 幼虫や蛹の段階で成長を抑え、繁殖サイクルを遮断。

      • 環境への影響が少なく、非標的生物への安全性が高い。

      • 使用適期: 幼虫が活動を始める晩春や初夏。


  2. ダブルトリガー


    成分: シクラニリプロール (Cyflumetofen)

    作用機構: 虫の摂食行動を迅速に阻害し、短期間で駆除します。

    特徴:

    • 幼虫、成虫、卵のすべてに効果を持つ。

    • 他の益虫や天敵に対する影響が少ない。

    • 使用適期: 成虫の活動初期から発生ピーク時。


幼虫駆除用薬剤


  1. アクセルフロアブル


    • 成分: メタフルミゾン (Metaflumizone)

    • 作用機構: 樹木内部に直接注入され、幼虫の神経信号を遮断して致死に至らせる。

    • 特徴:

      • 幼虫が樹木内部に潜む場合でも高い駆除効果を発揮。

      • 残効性が高く、再侵入にも対応可能。

      • 使用適期: 幼虫が活発に活動する夏季後半から秋。


  2. バイオセーフ

    成分: 昆虫寄生性線虫 (スタイナーネマ・カーポカプサエオール株)

    作用機構: 線虫が幼虫に侵入し、共生細菌を放出して幼虫を致死に至らせる。

    特徴:

    • 化学農薬が使用できない地域でも安全に利用可能。

    • 非標的生物や環境への影響が極めて少ない。

    • 使用適期: 幼虫の排出孔が確認される時期。


    バイオセーフを使用した幼虫駆除は、一定の効果があるが、施工方法に工夫が必要。化学農薬ではないため、環境に配慮した防御が可能。


薬剤散布の注意点


  1. 散布時期の最適化:

    幼虫や成虫の活動時期を正確に把握し、適切なタイミングで散布を行うことが重要です。

  2. 環境への配慮:

  3. 化学農薬使用時には周辺環境や非標的生物への影響を最小限に抑える対策が必要です。

  4. 安全管理:

  5. 散布作業時には防護具を着用し、作業員の安全を確保します。


薬剤を活用したクビアカツヤカミキリ防除は、地域の生態系を守るために重要な取り組みです。これらの方法を適切に組み合わせることで、桜などの貴重な樹木を保護し続けることが期待されています。


ピアノ線を用いた駆除方法の解説やブラックライトを用いた卵の発見、楠材などを使用した防除や発見方法は興味深い内容でした。樹木内部の幼虫駆除は、樹木の健康を維持しつつ長期的な被害軽減に寄与します。また効果的な駆除方法の導入には、地域や樹木の状況に応じた調整が必要です。


今回の講座を通じて、サクラ保全における技術的進歩と文化的価値の重要性を再認識させていただきました。特にクビアカツヤカミキリ対策については、化学的・物理的・生物的防除を組み合わせた総合的なアプローチが大事になります。


今後は、これらの知見を活かしながら、より効果的で持続可能な保全活動を実践していければと思います。






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