top of page

亀山市の自然とかめやま生物多様性共生区域認定制度:地域の未来を守るための取り組み

亀山市産業環境部 生物多様性・獣害対策室の方と一緒に、三重県亀山市にある能褒野神社を訪れ、「かめやま生物多様性共生区域認定制度」についてお話を伺ってきました。



三重県 能褒野神社

鈴鹿市 能褒野神社

能褒野神社は、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)を主祭神とする神社で、その隣には日本武尊の陵墓とされる能褒野王塚古墳があります。この古墳は全長約90メートルで、北勢地域最大の前方後円墳として知られ、明治12年に内務省によって日本武尊の墓と指定されました。


能褒野神社


市内には、鈴鹿国定公園や鳥獣保護区だけでなく、身近な田んぼや畑、神社やお寺の境内、企業の緑地など、多くの自然が残されています。これらの自然は、人々が管理・利用することで守られ、生物多様性の保全につながっています。




亀山市が令和5年度から開始した「かめやま生物多様性共生区域認定制度」は、市内の生物多様性の保全や再生に取り組む地域や団体を認定し、その活動を支援・促進する制度です。私達が管理している亀山にある竹林などが認定できるかなども色々とお話をお聞きしてきました。


認定の対象


  • 鈴鹿国定公園

  • 鳥獣保護区

  • 里山

  • 水田や畑地

  • 神社仏閣の境内林

  • 企業の保有する緑地

  • その他、生物多様性保全に寄与する区域



亀山市は、生物多様性の保全を地域の重要な課題と位置づけ、「亀山市生物多様性戦略」を策定しています。この戦略は、地域固有の動植物の保護を目的とし、市民と協力して持続可能な自然環境を維持することを目指しています。


生物多様性戦略の柱として、以下の取り組みが行われています。


  • 生息地の保全と再生:里山、公園、河川など多様な生息環境の保全を進めるとともに、減少している生物種の生息環境の再生に取り組んでいます。地域固有の植物の植生再生や絶滅危惧種の保護プロジェクトが進められています。


  • 市民参加型の保全活動:市民が積極的に生物多様性の保全に関与できるよう、環境教育プログラムや自然観察会を開催しています。これにより、市民の環境意識を高め、次世代の自然保護の担い手を育成することを目指しています。


  • 外来種対策:地域の生態系に影響を及ぼす外来種の管理も重要な課題です。亀山市では、外来種の駆除や生態系への影響のモニタリングを行い、地域固有の生物多様性を守る取り組みを進めています。


これらの戦略により、亀山市は地域固有の生物多様性を次世代へ引き継ぐことを目指し、環境保全活動を市全体で推進しています。






能褒野神社は、その歴史的価値と豊かな自然環境から、地域の生物多様性保全においても重要な役割を果たしています。周辺は古くから自然が保たれており、希少な動植物の生息地となっています。現在、この神社の一帯も生物多様性保全の観点から申請が進められており、地域の自然資源としてさらに保護が求められています。


神社の境内や周辺には、地域特有の植生や動物が存在し、その保護に向けた活動が計画されています。



能褒野神社

能褒野神社は、地域のシンボルであると同時に、生物多様性保全の拠点として重要な場所です。今後も地域の自然環境の価値を守り、次世代に継承するための取り組みが期待されています。


環境保全と未来への挑戦


亀山市の自然環境は、多様な地形と豊かな生物相によって支えられています。しかし、絶滅危惧種の増加や帰化植物の拡大、気候変動による環境変化が懸念されています。市では、自然公園の整備を通じて、市民と自然のつながりを強め、生物多様性の保全を推進しています。


亀山市について


亀山市は三重県の中部に位置し、四季折々の美しい自然に恵まれた地域です。気候は東海地方特有の表日本型で、夏は高温多湿、冬は乾燥した冷気に覆われます。特に「鈴鹿おろし」と呼ばれる季節風が鈴鹿山脈から吹き下ろし、冬の寒さを一層厳しくします。標高が高くなるにつれ降雪量が増え、平野部と山岳部の気候差が大きいのが特徴です。年間平均気温は約15.6℃、年間降水量は約1,958mmで、豊かな水環境を育んでいます。


多様な地形と地質


亀山市の地形は多様で独特です。市内を流れる鈴鹿川は、三重県と滋賀県境の高畑山麓に源を発し、山地や丘陵地を経て平野部へと流れています。この川は市民の生活にとって重要で、農業用水や防災の観点からも不可欠です。


市内北部には鈴鹿山脈がそびえ、野登山(標高851.6m)や仙ヶ岳(961m)などが有名です。これらの山々はハイキングや観光スポットとして親しまれています。地質的には、古生代ペルム紀や中生代白亜紀の地層で構成され、特に黒雲母花崗岩からなる仙ヶ岳の急峻な地形は自然の芸術品ともいえます。


また、鈴鹿山脈東側には一志断層帯が横切り、その周辺には長い年月をかけて形成された丘陵地や台地が広がっています。これらの地形が多様な動植物の生息地を提供しています。


植物相:豊かな生態系の礎


能褒野神社


亀山市内には多種多様な植物が生育しています。シダ植物は173種、種子植物は1,637種が確認され、その中には絶滅危惧種も含まれます。温暖な気候によりシイ・カシを主体とした常緑広葉樹林が広がっていましたが、現在はスギやヒノキの植林地が多くを占めています。また、過去の伐採により一部地域ではアカマツが広がり、貧栄養な土地に適応した植生が見られます。


特筆すべきは、日本固有のイヌブナやヤマシャクヤク、イチリンソウなどが自生している点です。これらの植物は環境の変化や人為的影響により数が減少しており、保全活動が必要とされています。また、コハコベやセイヨウタンポポなどの帰化植物も多く、人の移動や交流によって外来種が定着していることがわかります。


動物相:絶滅危惧種の保護


亀山市には、哺乳類26種、鳥類130種、爬虫類14種、両生類19種、淡水魚類42種が確認されています。哺乳類にはニホンジカやイノシシ、カモシカなどの大型動物が含まれ、主に北西部の山岳地帯に生息しています。鳥類では、オオタカやモリアオガエルなどの絶滅危惧種も確認されており、生態系の健康を示す指標となっています。


淡水魚では、日本固有種のネコギギが特に注目されています。ネコギギは全長約15cmの小型魚で、伊勢湾や三河湾に注ぐ河川の中流域に生息していますが、生息環境は護岸のコンクリート化などで脅かされています。1977年に国の天然記念物に指定され、保護活動が進められています。


また、昆虫類も豊富で、トンボやチョウなど多くの種が確認されています。特に亀山市の地形に適応したチョウ類は、平地から山地まで多様な環境で生息し、生物多様性の高さを示しています。


自然公園と市民のふれあい


亀山市では、市民と自然が触れ合う場所として「亀山里山公園『みちくさ』」と「亀山森林公園『やまびこ』」を整備しています。「みちくさ」は丘陵地の谷間に位置し、水辺環境が豊富で、湿地性の植物や動物が多く観察できます。春にはシャガやキショウブが咲き乱れ、夏にはスイレンが池を彩ります。この公園は、市民が里山の自然に親しみながら、生態系について学ぶ場となっています。


「やまびこ」では、広葉樹の森でさまざまな山野草が見られます。ミツバアケビやミゾソバなど、秋の山野を彩る植物が豊富で、訪れる人々に四季折々の風景を楽しませています。また、山林内ではカブトムシやクワガタなどの昆虫も多く、特に子どもたちに人気のスポットです。


亀山市の自然環境を守り、未来の世代に引き継ぐためには、地域社会全体での理解と協力が必要です。そのための第一歩として、市民一人ひとりが自然と関わり、地域の生物多様性について学び続けることが大切です。

bottom of page